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矯正治療で歯が短くなるって本当?(歯根吸収とは)
矯正治療では、歯に力をかけると 片側の骨が少しずつ溶け、反対側で新しい骨が作られる という「リモデリング」という仕組みを利用して歯を動かします。
この自然な働きがあるからこそ、歯は少しずつ正しい位置へ移動していきます。
ただし、この過程で 歯の根っこの先端(歯根)がわずかに短くなることがあります。これを「歯根吸収」と呼びます。
「歯が抜けてしまうのでは?」と不安に感じる方もいますが、実際にはほとんどが生活に影響のない範囲で起こる変化です。
歯根吸収のリスクはどれくらい?(世界の研究から)
アメリカ矯正歯科学会誌に掲載されたシステマティックレビュー(複数の研究をまとめた報告)によると、次のことがわかっています:

- 矯正治療を受けた多くの人に、わずかな歯根吸収が見られる
- しかし 重度(4mm以上)の吸収は1〜5%程度とごく少数
- 強い力をかけるとリスクが上がるが、弱い力であれば最小限に抑えられる
- 治療を一時的に休むことで、吸収の進行が減ることもある
- 吸収があっても、歯の寿命や機能に大きな影響はほとんどない
👉 世界中の研究から、「歯が抜け落ちるほどのリスクは極めて低い」ことが確認されています。
当院で行っている歯根吸収の予防と対応
当院当院では、最新のエビデンスを踏まえて、次のような取り組みをしています。
- できるだけ弱い力(ニッケルチタンワイヤー)を使用
- 舌や口の機能トレーニングで余分な力を減らす
- 定期的なレントゲン撮影で歯根の状態をチェック
- 万が一吸収が確認された場合は、
- 一時的に矯正治療をお休み
- ワイヤーを工夫して歯を休ませる
- 必要に応じて治療計画を変更
こうした対応で、患者さんの歯をしっかり守ります。
よくある質問(FAQ)
Q. 矯正で歯が抜けてしまうことはありますか?
A. ありません。歯根吸収が起きても、歯が抜け落ちるようなケースは極めてまれです。研究でも、歯の寿命や機能に大きな影響はほとんどないと報告されています。
Q. 歯根吸収を完全に防ぐことはできますか?
A. 完全に防ぐことはできませんが、弱い力での治療と定期的なレントゲンチェックでリスクを最小限に抑えられます。
Q. 吸収が見つかったら治療は中止ですか?
A. 中止ではありません。必要に応じて治療を一時的に休んだり、力を弱めたりすることで対応できます。
Q. どんな人が歯根吸収になりやすいですか?
A. 遺伝的な要因や歯の形、治療期間の長さなどが関係することがわかっています。ただし「誰にでも起こり得る変化」であり、事前に完全に予測することは難しいとされています