初診カウンセリング

犬歯が生えてこない?|小学生で気をつけたい“埋伏犬歯”の原因・予防・治療

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2025.09.05

初診カウンセリングではレントゲン/CTでお口の中をチェックしますが、そのとき**「上の犬歯がまだ生えていない(埋伏している)」ことが見つかる場合があります。
乳犬歯が残っていると気づきにくく、
「右は生えたのに左はまだ…」**のような片側だけ遅れているケースも珍しくありません。
「それって本当に問題?」と思われるかもしれませんが、放置で大きなトラブルにつながることがあるため、年齢に応じた対処が大切です。


犬歯って、いつ生えてくるの?

犬歯(糸切り歯)は10〜12歳ごろに生えてくるのが一般的です。
11歳を過ぎても片側だけ生えてこない場合は、いったん専門的なチェックをおすすめします。

📺 「子供の歯の生え方」ミニ解説動画


犬歯が生えてこない原因

  • スペース不足:歯並びに犬歯の入る場所がない
小学生の犬歯が生えるスペース不足で歯列に収まらない症例写真。犬歯が正しく萌出できない原因を解説。
  • 方向のずれ:犬歯が骨の中で斜め/横向きになっている
犬歯が斜め方向に埋伏している歯科レントゲン画像。放置すると隣の歯を圧迫・吸収するリスクを説明

犬歯の位置と乳歯が残っている

 


放っておくとどうなる?

  • 隣の歯の根っこが溶ける(歯根吸収)
    放置された「ずれた犬歯」が隣接歯の歯根を傷めることがあります。
埋伏犬歯が隣接歯の歯根を溶かしている状態を示す歯科レントゲン。歯根吸収リスクの注意喚起
  • 歯並び・噛み合わせの悪化
    犬歯が本来の位置に来ないため、全体のバランスが崩れ、矯正が複雑・長期化することがあります。
  • 外科処置が必要になることも
    成長が進むほど、歯を動かすスペース確保や外科的アプローチの必要性が増します。
永久犬歯が歯ぐきに埋伏している症例写真。早期発見と矯正治療の重要性を解説。

何歳でレントゲン/CTを撮るべき?

上の前歯4本(中切歯と側切歯)が生えそろう8歳ごろに、一度犬歯の位置をチェックすることをおすすめします。まずは通常のレントゲンで確認し、必要に応じて範囲を絞った低被ばくCTを用いて立体的に評価します。当院で犬歯の位置チェックに使うCTは低線量モードで約11マイクロシーベルトとなっており、これは日本人が1日に自然界から受ける放射線量(約6.6マイクロシーベルト)と比較しても安心できるレベルです。

小学生の犬歯位置確認に使用する歯科CTの被ばく量比較図。日常生活の自然放射線と比較し、安全性を説明

小学生の埋伏犬歯の治療

① レントゲンで早めにリスクチェック

犬歯が骨の中で前に倒れてしまっていると、生える方向を見失ってしまうことがあります。
レントゲンではその位置や角度が確認でき、埋伏リスクを早期に見つけることが可能です。
とくに「11歳を過ぎても犬歯が片側だけ出てこない」場合は、一度のチェックをおすすめします。

犬歯の位置が前方にずれている小児矯正の症例。レントゲンと口腔内写真で位置異常を確認。

② 必要に応じて乳歯の抜歯で道を開ける

乳歯が邪魔をして、永久歯が出てこられないこともあります。
このような場合には、周囲の乳歯を抜くことで、自然に出てくるスペースをつくることが大切です。
“こどものうちの処置”で、将来の大がかりな治療を回避できることもあります。

小学生の矯正治療で乳歯を抜歯し、永久犬歯の萌出スペースを確保する症例写真。

③ 出てこない場合は、外科的牽引へ

もし自然に出てこない場合は、外科的に歯ぐきを開いて犬歯の頭を出し、装置で引っ張る方法を行います。
これは「開窓牽引(かいそうけんいん)」と呼ばれ、埋まっている犬歯を正しい位置に導くための方法です。
当院では、痛みや腫れが少ないように処置内容を工夫しています。

④ 犬歯が出てきました

牽引を続けることで、少しずつ犬歯の頭が見えてきます。
出てきた後も、周囲の歯とぶつからないようにワイヤーでスペースを整えながら慎重に治療を進めます。
こうして1本1本の歯が、本来あるべき位置にしっかりと並んでいきます。

矯正治療により埋伏犬歯が徐々に萌出してきた症例写真。ブラケット装置で正しい位置へ誘導

📖 実はこんな論文もあります

私たちが日々の治療に活かしているのは、経験だけではありません。
たとえば、**アメリカの矯正歯科学会誌**では、以下のような報告があります。

「7〜8歳の時点で急速拡大(RME)を行うと、犬歯の角度・位置が改善しやすい」
「特に8歳未満での処置が、最も統計的に有意だった」

これはまさに、**「タイミングが命」**ということを裏付けてくれるデータです。
だからこそ、私たちは「まだ症状がないうちからのチェック」を大切にしています。

もしかすると、11歳ではなく8歳ごろに一度レントゲンで位置を確認しておくと、
将来の不安や大がかりな処置を避けられるかもしれませんね。

犬歯の埋伏と急速拡大の効果に関する海外論文(AJO-DO掲載)の研究資料

🗓 不安があれば、まずはカウンセリングにご相談ください

「今すぐ治療が必要なのか?」
「このまま様子を見ていて大丈夫なのか?」
そんなお悩みがあれば、まずはカウンセリングで一緒に確認してみませんか?

当院では、必要に応じて低被ばくの簡易レントゲンでのチェックも行っております。

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