矯正治療を考えている方の多くが気になるのは、
「安心して治療を受けられるのか?」という点ではないでしょうか。
氏井矯正歯科では、2022年から**デンタルモニタリング(DM)**という、AI技術を活用した最新の見守りシステムを導入し、マウスピース矯正・保定・ワイヤー矯正まで幅広く活用しています。
このブログでは、DM(デンタルモニタリング)導入前と導入後の違いを比較しながら、患者さん目線でのメリットと注意点をまとめました。
「奈良で矯正を検討しているけど、不安もある…」という方にとって、安心の材料になれば幸いです。

目次
DM(デンタルモニタリング)導入前後の比較について

当院では、これまでの経験をもとに
マウスピース矯正
保定
ワイヤー矯正
の3つの場面で、DM導入前と導入後を比べて検討してきました。
ここからは、それぞれのケースで
「どのような違いがあったのか」
「どんなメリット・注意点があるのか」
を順番にご紹介します。
DM(デンタルモニタリング)とマウスピース矯正について
奈良でマウスピース矯正を検討している方にとって、気になるのは
「装置がきちんと合っているのか」
「治療が順調に進むのか」
という点ではないでしょうか。
当院では2022年から**デンタルモニタリング(DM)**を導入し、AIによるチェックで安心できる矯正治療をサポートしています。
DM(デンタルモニタリング)導入前
従来は2〜3ヶ月ごとの来院で経過を確認していました。
そのため、もしマウスピースが合っていなかった場合、気づくまでに時間がかかり、治療の質が下がってしまうリスクがありました。

DM(デンタルモニタリング)導入後
DMを導入してからは、1週間ごとにAIがチェックしてくれるため、不適合を早期に発見できます。
その結果、治療の質を落とさず、安心して矯正を進めることが可能になりました。
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患者さん側のメリット
患者さんには、不適合があった場合にアプリを通じて通知が届く仕組みがあります。
たとえば「装置を交換せずに同じアライナーを続けてください」といった具体的な指示が出るため、安心して日常生活を送りながら治療を続けられます。
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医院側のメリット
医院では、管理画面を通じて以下のような情報を確認できます。
不適合の程度(軽度〜重度)
アタッチメントの欠損
微小な虫歯や歯肉の炎症の兆候
問題があればアラートが表示され、早期に対応できるのが大きなメリットです。
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保定 × DM(デンタルモニタリング)
当院の取り組み
矯正治療が終わったあとには「保定」が始まります。
保定も大切な矯正治療の一つですが、問題が起こることは少なく、通常は4〜6ヶ月ごとの来院が基本となります。
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ただし、すべての方が同じではありません。
・6ヶ月間隔で来院しても全く問題がない方
・わずか2ヶ月ほどで後戻りが始まってしまう方
このように、個人差が大きいのが保定期の特徴です。
そこで当院では、このリスクを早めに発見できないかと考え、DM(デンタルモニタリング)のAIチェックを保定治療に活用できるよう、本社に繰り返し提案してきました。
その結果、少しずつ仕組みが形になってきたため、今回改めてご紹介いたします。
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さらに、2025年以降に治療を開始された患者さんに関しては、小学生を除き原則として全員にDMを導入しています。
(まれに適応不可の方もいらっしゃいますので、その際はご了承ください。)
もちろん「自分も導入したい」というご希望があれば、お気軽にお申し出ください。
症例紹介:開咬のケース
こちらの患者さんは、初診時に**開咬(前歯が噛み合わない状態)**がありました。
マウスピース矯正による治療を経て、術後には前歯がしっかりと噛み合うよう改善しました。
ただし、開咬の方は舌の癖(舌突出癖など)が原因となっている場合も多く、治療後に後戻りしてしまうリスクがあります。
そのため、この患者さんには治療後もDM(デンタルモニタリング)を継続していただきました
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保定開始からの経過
保定開始6ヶ月後
経過を見ていく中で、DMのAIがリテーナーと歯の間に僅かな隙間を検知しました。
もちろん「隙間=必ず後戻り」というわけではなく、実際に来院いただいたときには問題がないケースもあります。
保定開始9ヶ月後
ただし、この患者さんではAIが繰り返し検知を出し、警告も軽度から重度に変化してきました。
慎重に確認したところ、やはり後戻りが始まっていたため、来院いただき追加の対応を行いました

再治療の提案と対応
そこで再治療を行ったところ、2ヶ月ほどで改善が見られました。
今後は、もう少し改善が進んだ段階で裏側から固定式のワイヤーを装着する可能性があります。

一方で、「最初から固定式のワイヤーを入れておけば良いのでは?」という意見もあるかと思います。
しかし、固定式ワイヤーは歯周病のリスクを高めることや、私自身の臨床経験から必ずしも後戻りを完全に防げるものではないと考えています。
そのため、まずは固定式を使わずに進め、必要な方にのみ導入する方針をとっています。
まとめ(保定について)
このように、DM(デンタルモニタリング)を活用することで、従来の矯正治療では気づくのが難しかった後戻りの兆候を早期に把握し、追加治療で改善につなげることが可能になりました。
これは、これまでの矯正治療の枠組みでは対応しきれなかった部分を補える画期的なシステムだと考えています。
ワイヤー矯正 × DM(デンタルモニタリング)
最後に、ワイヤー矯正とDM(デンタルモニタリング)の関係についてご説明します。
正直なところ、DMのAI検知とワイヤー矯正の相性は、マウスピース矯正や保定ほど高くはありません。
ここは今後の課題でもありますが、当院での現時点での取り組みを整理しました。

ワイヤー矯正とステージング
ワイヤー矯正における歯の動きは、スライドにあるように4つのステージに分けて考えることがあります。
(この考え方は私の自論でもあり、今後変更する可能性があります。)
👉 ステージングの詳細については、別ブログで解説予定です(現在、作成中 2025.9.11)
リトラクションとDM
今回注目するのは、**リトラクション(抜歯スペースを閉じる治療)**とDMの組み合わせです。
リトラクションには大きく2つの方法があります。
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ワイヤーを曲げて閉じる方法(ループメカニクス)
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バネ(クローズドコイル)で閉じる方法(スライディングメカニクス)
このうち、バネで閉じる場合(スライディングメカニクス)にDMが有効であると考えています。

👉 理由:バネが粘膜に巻き込まれるトラブルをAIが早期に検知できるからです。

👉 また、スペース閉鎖の進行具合も確認でき、動きが遅れている場合はバネではなくスライディングへ切り替える判断に役立ちます。
(スライド)
この点については、私の症例報告としてオーストラリアの歯科専門誌にも掲載されています。
詳しくは以下をご覧ください。
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外部リンク(論文掲載誌):Australasian Dentist Issue 109, July 2025(p72掲載)
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内部リンク(詳細ブログ):ワイヤー矯正 × DM の詳しい解説はこちら
デンタルモニタリングの進化
さらに最近では、デンタルモニタリングが進化し、**写真だけでなく立体構造を確認できる「デンタルモニタリングプラス(DM+)」**が登場しました。
私は偶然にもこの特別チケットを獲得することができ、現在は当院でも試用を開始しています。
(👉 獲得できた経緯は、こちらのブログをご覧ください)
このDM+では、従来の「不適合検知」に加えて、
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スペース閉鎖のスピードをAIが把握できる可能性
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レベリング・リテンション・ディテーリングといった治療の各ステージまで網羅できる可能性
が見えてきています。
今後、この点についてはデータがまとまりしだいでさらに詳細に報告する予定です。
まとめ(ワイヤー矯正について)
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ワイヤー矯正におけるDMは課題もあるが、リトラクション期では有効性を発揮する
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特に「バネ使用時の巻き込み検知」や「スペース閉鎖の進行確認」で有用
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DM+ の登場により、今後さらに活用範囲が広がる可能性がある
まとめ
奈良の氏井矯正歯科では、2022年から**デンタルモニタリング(DM)**を導入し、
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マウスピース矯正では適合の確認
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保定では後戻りの早期検知
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ワイヤー矯正ではリトラクション期の安全性向上
と、それぞれの治療に合わせた活用を進めてきました。
さらに最新の**DM+**によって、写真だけでなく立体構造やスペース閉鎖のスピードまでAIが把握できるようになり、これまで以上に精密で安心できる矯正治療の実現が期待されています。
従来は来院時にしか確認できなかったリスクを、DMによって「日常の中で見守れる」ようになったことは、矯正治療にとって画期的な進化です。
当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な治療と保定をサポートしていきます。
矯正治療に不安を感じている方も、ぜひ一度初診カウンセリングでご相談ください。
AIはあくまで「補助の道具」
最後に一つ大切なことがあります。
DM(デンタルモニタリング)は非常に有効なシステムですが、AIはあくまで補助であり、完璧ではありません。
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実際にはマウスピースがしっかりはまっているのに、AIが「不適合」と判断することがある
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逆に、ブラケットの脱離を見逃すこともある
そのため、最終的な診断や判断は必ず人間の目で確認することが必要です。
当院でははDMを「補助の道具」として活用しつつ、患者さんと一緒に安心できる治療を作っていきたいと考えています。


