矯正治療

犬歯が治療の質を決める理由|整える→下げる→仕上げるの中で犬歯が果たす役割

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2025.11.20

矯正治療というと、
前歯=見た目、奥歯=かみ合わせ
この2つに目が向きがちです。

ですが、治療を進めていくうえで
“犬歯”も非常に重要な役割 を担っています。

歯を抜く矯正治療は
整える → 下げる → 仕上げる → 守る
という流れで進んでいきますが、
そのそれぞれのステージで
犬歯がどのように働くのか をまとめてみました。

犬歯 いい位置

上の図の犬歯の位置が比較的正常と言われています。


1. 犬歯の性質|犬歯は“矯正のバランサー”

犬歯は、見た目以上に“奥が深い歯”です。

  • 歯根が一番長い → 寿命が長い歯
  • 前歯と奥歯のちょうど中間に位置する
  • 噛み合わせの横滑りをガイドする
  • 「犬歯誘導」が顎の動きを安定させる

つまり犬歯は、
歯列全体の中心でバランスを取る“軸”のような歯。

出っ歯の矯正治療 上の犬歯が前方位

2. レベリング(整えるステージで犬歯をどうする?)

● 犬歯の“位置合わせ”が最初の鍵

矯正の最初のステージでは
上下の犬歯の位置が正常かどうかを必ず確認します。

理由はシンプルで、
犬歯は矯正全体の基準点(リファレンスポイント) だからです。

この上の写真では犬歯が前に出すぎているので、下の写真のように上犬歯を後方へ下げてバランスを整えます。


● 犬歯をスムーズに動かすための工夫

犬歯は後方へ移動させるために
ニッケルチタンでできた超弾性で形状記憶のある50gのクローズコイルで月0.5mm 程度の後方移動

ただし、

  • 反応が鈍い犬歯
  • 骨が厚い犬歯
  • 根が長すぎる犬歯

など、“動きにくい犬歯” も一定数います。
これは原因がまだ完全に解明されておらず、
当院でも継続的にデータを集めています。


犬歯がスムーズに動くポイント①

抜歯後は、犬歯が硬くならないうちに動かすのがコツ

抜歯直後の骨は柔らかく、
犬歯が動きやすい“ゴールデンタイム” です。

「抜歯したら、早めに来院を」
はこの理由です。


● 犬歯の“動きやすさ”には個性がある

  • 犬歯の根がとても長い
  • 骨が厚く、抵抗が強い
  • 舌で犬歯を押して止めている
  • 骨とぶつかって動かない

動きやすい犬歯・動きにくい犬歯がいます。


● DM+で「動く犬歯」「動かない犬歯」が一目でわかる

DM+は犬歯の性質を理解するうえで非常に有効です。

  • 前後に動く犬歯
  • 角度だけ変わる犬歯
  • 左右差が強い犬歯
  • 舌圧で止められている犬歯

写真を比較すると
動いている/動いていないの差がハッキリ可視化 されます。

(ここにDM+比較画像
ALT:DM+で犬歯の移動差を比較した画像)

この比較が、めちゃくちゃおもしろいところ。


3. クロージング(スペース閉鎖で犬歯が主役に)

犬歯の位置が整うと、
いよいよ全体的に前歯を後方へ下げていきます。

このとき犬歯は
“バランサー”として最も重要な役割 を果たします。


● 犬歯の角度が全てを決める

犬歯の角度が立っていないと

  • 前歯が正しく後ろへ下がらない
  • 過蓋咬合になりやすい
  • 左右差が大きくなる

など、
矯正の質に直結する問題 が出ます。


● 計画と実際のズレを毎週チェック

  • 計画は suresmile
  • 実際の動きは DM+で毎週確認

計画と実際の差を見ながら、
犬歯の角度・位置・左右差を調整していきます。

(ここにDM+深度比較写真
ALT:犬歯の角度変化を示す比較図)


● 裏側矯正(リンガル)の場合の工夫

裏側矯正は
前歯が倒れやすい 特性があります。

そのため、
犬歯から犬歯を“一気に引く” 方法が有効なことが多く、
症例に応じて治療方法を切り替えています。


4. フィニッシング(仕上げは“犬歯誘導”で決まる)

最終的なゴールは 犬歯誘導が安定している状態

  • 顎の横滑りをガイド
  • 奥歯の負担軽減
  • 噛み合わせが安定
  • 後戻りしにくい

犬歯が整う=仕上げ成功
これは矯正医としての大きな判断基準です。

(ここに犬歯誘導の図
ALT:犬歯誘導の動きを示す説明図)


5. 犬歯が“良い位置”にいけない専門的で意外な理由

● ① 側切歯が小さい・大きい(矮小歯/Big tooth)

側切歯が小さいと犬歯は前に出やすく
→ 犬歯誘導が作りにくい
→ 幅を足す必要があるが、患者さんは希望されないことが多い

● ② 上下の歯のサイズバランス(Bolton問題)

上の歯が大きいと
→ 出っ歯傾向
→ 犬歯が前に位置してしまうことがある

→ だからこそ矯正では

「完璧ではなく、生理的な調和」をゴール にする。


6. 上だけ矯正がうまくいかない理由=犬歯位置が決め手

上下の犬歯が合っていないと、

  • 前歯も奥歯も安定しない
  • 噛み合わせ誘導が作れない
  • 後戻りしやすい

犬歯は“両アーチで見る歯”。
上だけ下だけで治らない理由がここにあります。


カウンセリングへどうぞ(CTA)

(シリーズ①②のスタイルで作成可能)

BACK