症例別の治療法について

開咬の矯正は保険適用される?|自費との違いと判断ポイント

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2025.09.11

開咬とは?

開咬の横顔イラスト|前歯が噛み合わない噛み合わせの状態と矯正治療イメージ

開咬(かいこう)とは、口を閉じても前歯が噛み合わない状態をいいます。
「自分は普通だと思っていたけど、学校の歯科検診で指摘された」という方も少なくありません。

見た目だけでなく、食べ物を噛みにくい、発音がしにくい、舌の癖が出やすいなど、生活に影響することもあります。
放置して自然に治ることはほとんどなく、適切な治療が必要になる場合があります。


保険適用されるケースとは?

「開咬の治療は保険が効くのですか?」というご質問をよくいただきます。

結論からいうと、保険が適用されるのは「顎変形症」と診断され、外科手術を併用する場合のみ です。

  • 骨格に大きなズレがある「骨格性開咬」
  • 大学病院や認定施設での診断が必要
  • 外科手術を行うために入院が必要になります。
  • 治療の流れ:CT診断 → 術前矯正→手術 → 術後矯正→保定
  • 装置は「メタルブラケット+ワイヤー」が基本

👉 当院でも大学病院と連携し、矯正治療と外科手術を安全に進める体制を整えています。詳しくは下の動画をご覧ください。

また、初回のカウンセリングでCT診断を行い、顎変形症と診断できる場合もあります(精密検査は医師による判定が必要です)。
初診カウンセリングやCT診断の詳細については、下記のページをご覧ください。

奈良の矯正歯科での初診カウンセリングとCT診断の相談風景

保険治療のメリット・デメリット

メリット

  • 費用が安く済む(60〜80万円程度)
  • 骨格から改善するため、横顔など顔貌の変化が大きい
  • 医学的な基準に基づいた安心感

デメリット

  • 装置はメタルブラケットのみ(審美ブラケットは不可)
  • 外科手術と入院が必要になります
  • 鼻の形や唇のゆがみなどは対象外

✨ 症例10の解説(骨格性開咬 × 外科矯正/保険治療)

この患者さんは「前歯で噛めない」という主訴で来院されました。
診断は 顎変形症に起因する骨格性開咬 で、骨格に大きなズレがあるため、通常の矯正治療だけでは改善が難しいケースでした。そのため、保険適応で外科矯正を併用し、大学病院と連携して治療を進めました。

詳しくは下の症例10を御覧ください

開咬の矯正治療症例写真|Before Afterで見る噛み合わせ改善例

自費診療になるケースとは?

すべての開咬が保険で治療できるわけではありません。
次のような場合は自費診療となります。

  • 骨格手術が必要ない軽度〜中等度の開咬
  • 噛み合わせや見た目に悩んでいても「顎変形症」と診断されないケース

自費治療の一例

  • マウスピース矯正(インビザラインなど)

骨格性で問題なく機能的な問題だけであればマウスピース矯正治療で比較的早期に治ることが可能です。

開咬をマウスピース矯正で改善した症例|インビザラインによるBefore After

マウスピースで治る開咬に関してこのブログを御覧ください

開咬はマウスピース矯正で治せる?費用・期間・ワイヤー矯正との違いを解説する女性のイメージ

ワイヤー矯正に関して

骨格性の開咬ではなく、歯性開咬や中等度のケースでは、外科手術を行わずにワイヤー矯正で治療できる場合もあります。

この場合は、**インプラントアンカー(矯正用ミニスクリュー)**の使用がほぼ必須となります。
奥歯にアンカーを打ち込み、その固定源を利用して歯を効率的に動かすことで、前歯が噛み合うように調整していきます

症例集5を御覧ください

開咬の症例写真|中等度の開咬で自費矯正が必要となるケース

👉 外科手術を望まれない方は自費治療を選ばれることが多いです。

外科矯正をせずに開咬を治療できるかどうかを判断するには、骨格の分析が必ず必要です。
当院では9つの分析パターンを用いて診断を行っていますが、その中で「下あごが前に出ていて、かつ開咬があるパターン1」の場合は、自費での矯正治療は難しくなります。

開咬を診断するための9つの骨格分析パターン|矯正歯科での分類図

9つの分析パターンに関しては詳しくはこのブログを御覧ください

セファロ分析とは?矯正歯科で開咬や骨格性不正咬合を診断するレントゲン分析

保険と自費の違いまとめ

項目保険矯正自費矯正
対象骨格性開咬(顎変形症)骨格的ではない開咬
費用約20〜40万円約70〜100万円以上
装置メタルブラケットマウスピース/白いブラケット
顔貌の変化大きい(外科手術あり)控えめ(歯列中心)
通院施設保険適用の大学病院・認定施設自由診療の矯正歯科

実際の判断ポイント

「保険で治せるのか?」「自費になるのか?」は、ご自身では判断できません。
必ず CTやセファロ分析などの精密検査 を行い、骨格性かどうかを診断する必要があります。

  • 骨格性であれば保険対象
  • 骨格的な問題がない場合は自費治療
  • 顎の成長が止まる18歳以上で判断がしやすい

👉 だからこそ、診断を受けることが一番の近道 です。

✅ よくある質問(FAQ)

Q1. 開咬の矯正は何歳から保険が使えますか?
A. 保険が適用されるのは「顎変形症」と診断された場合で、基本的に顎の成長が止まる18歳以降が対象となります。成長期のお子さんの場合は自費での矯正治療になることが多いです。


Q2. 外科手術は必ず必要ですか?
A. 骨格に大きなズレがある骨格性開咬の場合、手術が必要になるケースが多いです。ただし、軽度〜中等度の開咬であれば手術を行わず、自費の矯正治療で改善できる場合もあります。


Q3. 保険治療ではどんな装置を使いますか?
A. 保険の矯正治療ではメタルブラケットとワイヤーが基本です。審美的な白や透明のブラケットは保険の対象外となり、自費治療でのみ選択できます。


Q4. 保険と自費で費用はどのくらい違いますか?
A. 保険の場合は40〜60万円程度で、外科手術も含めて治療を受けられることが多いです。(症例によって異なります)自費の場合は治療法や装置によって異なりますが、80〜100万円以上かかるのが一般的です。


Q5. 手術はどこで行いますか?
A. 手術は大学病院などの医療機関で行われ、当院と連携して治療を進めます。矯正治療は当院で、手術は提携病院で、という形で役割を分担しています。

ご案内

当院では、CT撮影とセファロ分析を含む 有料の初診診断 を行っています。
治療の必要性や保険の可否、自費治療の選択肢についても丁寧にご説明いたします。

👉 まずは診断を受けて、ご自身に最適な治療方法を一緒に考えていきましょう。

【初診相談のご予約はこちら】

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