ほかの歯医者さんで、こんなふうに言われたことはありませんか。
「骨格の問題ですね」
「歯が前に傾いているので、抜歯が必要かもしれません」
そう言われても、自分の骨格がどうなっているのか、歯がどれくらい傾いているのかは、鏡を見ても分かりません。「結局、自分の場合は何が原因なのか」が分からないまま、治療を決めるのは不安だと思います。
氏井矯正歯科クリニックでは、初診相談のときにCTを撮影し、あごの骨・歯の傾き・口元のバランスを数字で確認しています。この記事では、カウンセリングのCTで何が分かるのか、それが治療を考えるうえでどう役立つのか、そしてCTでも分からないことをお伝えします。
目次
なぜカウンセリングでCTを撮るのか
お口の中を見たり、写真を撮ったりするだけでは、歯ぐきの下の歯の根や、あごの骨の位置は見えません。
たとえば「口元が出ている」というお悩みでも、原因は人によって違います。
- 前歯が前に傾いているだけなのか
- あごの骨そのものが前に出ているのか
- その両方なのか
見た目が同じでも、原因が違えば治療の方向性が変わります。だから当院では、治療の話をする前に「なぜそうなっているのか」を確認するために、最初の相談でCTを撮影しています。
CTの画像からは、横顔のX線写真(セファロ)と同じ計測ができます。この計測をセファロ分析と呼びます。セファロ分析の基本はセファロ分析とは?顔の特徴から読み解く矯正治療の方法(Part1)で解説しています。
CTで分かること:前歯の位置を3つの視点で見る
前歯の位置は、「前後」「上下」「左右」の3方向から評価します。
| 方向 | 何を見るか | 主な評価方法 |
|---|---|---|
| 前後 | 出っ歯・受け口の傾向 | セファロ分析(ANB、U1 to SN) |
| 上下 | 前歯が下がっている・上がっている | セファロ分析+お口の中の写真 |
| 左右 | 正中(真ん中)のずれ | 正面の写真やスキャン |
このうち、口元の印象にいちばん関わる「前後」の位置は、次の3つの視点で確認します。
視点1:あごの骨の位置関係(ANB)
上あごと下あごの骨が、前後にどれくらいずれているかを角度で測ります。平均は約3°です。
- 大きい → 上あごが前、または下あごが後ろにある(骨格的に出っ歯の傾向)
- 小さい・マイナス → 下あごが前にある(骨格的に受け口の傾向)
ほかの歯医者さんで「骨格の問題」と言われた場合、多くはこの数字のことです。
視点2:上の前歯の傾き(U1 to SN)
上の前歯が、頭の骨の基準線に対して何度傾いているかを測ります。平均は約102°です。
- 大きい → 前歯が前に倒れている
- 小さい → 前歯が内側に倒れている
「歯が傾いている」と言われた場合は、この数字のことです。
視点3:口元のバランス(Eライン)
鼻の先とあごの先を結んだ線(Eライン)に対して、唇がどの位置にあるかを見ます。横顔の印象に直接関わる視点です。
分かると何が変わるのか:原因によって治療の方向性が変わる
3つの視点を組み合わせると、ご自身がどのタイプなのかが見えてきます。当院では、上の前歯について次の3つの方向性から考えます。
1. 前歯の位置は変えず、歯並びだけを整える
骨の位置・前歯の傾き・口元のバランスに大きな問題がない方です。でこぼこ(叢生)はあっても口元の出っ張りは気にならない、という方が多く当てはまります。前歯の位置には手を加えず、歯並びを整える比較的シンプルな治療になります。
症例No.16(24歳・女性・奈良市)は、このタイプでした。マウスピース型矯正装置で、歯を抜かずに治療しています。
2. 上の前歯を前に出す
前歯が内側に倒れていて、口元が平坦に見える方です。ここで大切なのは、原因が歯の傾きなのか、骨の位置なのかを見分けることです。歯の傾きが原因なら、歯の角度を起こすことで口元の印象が変わることがあります。上あごの骨そのものが後ろにある場合は、歯だけでなく骨ごと動かす必要があるため、手術を併用する矯正(外科矯正)を検討することもあります。
3. 上の前歯を後ろに下げる
前歯が前に出ている(出っ歯)方です。前歯を後ろに下げるには、下げるためのすき間が必要です。すき間が足りない場合は、抜歯が必要になることがあります。
症例:前歯の傾きと骨の位置、両方を見て決めたケース
| 患者 | 症例No.12 / 26歳・女性 / 大和郡山市 |
|---|---|
| 主なお悩み | ガタガタ |
| 診断名 | 上顎前突を伴う叢生 |
| 使用した装置 | 白い表側矯正装置 |
| 抜歯 | 上2本 |
この方は、上の前歯が内側に倒れていたため、歯の角度を起こす必要がありました。一方で、上あごの骨は前寄りの位置にあり、でこぼこも大きかったため、すき間をつくるために上の2本を抜歯して治療しました。
「歯が内側に倒れている」だけを見れば前に出す治療を考えますが、骨の位置とでこぼこの量まで見ると、抜歯が必要という判断になります。1つの数字だけでは治療は決まらないということです。
CTでも分からないこと
CTを撮れば何でも分かる、というわけではありません。カウンセリングのCTで分かるのは、今の骨と歯の位置です。次のようなことは、CTだけでは判断できません。
これからの成長
お子さんや成長期の方の場合、あごがこれからどれくらい、どの方向に成長するかは、1回のCTでは分かりません。
舌や唇のくせ
舌の位置や飲み込み方、口呼吸などのくせは、歯並びに影響しますが、止まった画像には写りません。お口の中の診察や問診で確認します。
歯の動き方・治療期間の個人差
同じような数字でも、歯の動き方には個人差があります。治療期間をCTだけで言い切ることはできません。
最終的な治療計画
カウンセリングのCTは、原因と治療の方向性をつかむためのものです。抜歯をするか、どの装置を使うかといった最終的な計画は、歯型や写真などの資料をそろえる精密検査のあとに決めます。
CTの被ばくが気になる方は、歯科用CTの被ばく量の記事で詳しく解説しています。
この記事のまとめ
- 「骨格が原因」「歯が傾いている」は、CTの数字で確かめられます
- 見るのは、あごの骨の位置(ANB)・前歯の傾き(U1 to SN)・口元のバランス(Eライン)の3つ
- 原因によって、前歯を「そのまま」「前に出す」「後ろに下げる」の方向性が変わります
- 成長・くせ・歯の動き方などはCTだけでは分からず、最終的な計画は精密検査で決めます
費用
※2026年10月5日時点の当院の料金です(すべて税込)。
| 初診相談 | 無料 |
|---|---|
| 初診相談+簡易診断(CT) | 4,400円 |
| 精密検査 | 16,500円(初診相談から3か月以内は4,400円割引) |
| 3Dデジタル診断 | 38,500円 |
最新の料金は料金ページでご確認ください。
よくある質問
- Q. ほかの歯医者さんで撮ったレントゲンがあれば、CTは撮らなくてもいいですか?
- ほかの歯医者さんのレントゲンをお持ちいただいた場合でも、当院でCTを撮影することがあります。当院の分析方法で、骨と歯の位置をあらためて測るためです。撮影が必要かどうかは、お持ちいただいた資料を見てからご相談します。
- Q. CTを撮れば、抜歯が必要かどうか分かりますか?
- 抜歯が必要になりそうかどうかの方向性はお伝えできます。ただし、最終的に抜歯をするかどうかは、精密検査で資料をそろえてから判断します。
- Q. 「骨格が原因」と言われたら、手術が必要ですか?
- 必ずしも手術が必要なわけではありません。骨のずれが小さい場合は、歯の位置を調整することで治療できることがあります。骨のずれが大きい場合は、手術を併用する矯正を検討することがあります。どちらに当てはまるかは、骨と歯の位置を測ったうえで判断します。
- Q. CTの被ばくは大丈夫ですか?
- 歯科用CTの被ばく量については、こちらの記事で詳しく解説しています。
院長より
ほかの歯医者さんで「骨格が原因」「歯が傾いている」と言われても、それだけではご自身の歯並びのことは分かりにくいと思います。大切なのは、言われた内容を自分の数字で確かめることです。骨の位置、前歯の傾き、口元のバランスを一緒に見ながら、なぜ今の歯並びになっているのかを説明します。ほかの歯医者さんで言われたことも、そのまま聞かせてください。治療を決めるのは、原因が分かってからで大丈夫です。