マウスピース

前歯のすき間(正中離開・すきっ歯)はマウスピース矯正で治せる?|非抜歯で改善した症例

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2026.07.23

「前歯の真ん中のすき間が気になる」「すきっ歯はマウスピースで治せるの?」とお悩みではありませんか。上の前歯の中央にすき間がある状態を「正中離開(せいちゅうりかい)」といいます。今回は、正中離開と出っ歯を、歯を抜かずにマウスピース矯正で改善した症例を、治療前後の写真・期間・費用とともにご紹介します。正中離開は、原因や歯並びの状態によっては、マウスピース矯正で改善できる場合があります。

そもそも「前歯のすき間(正中離開・すきっ歯)」とは?

正中離開(せいちゅうりかい)とは、上の前歯の真ん中にすき間があいている状態のことです。「すきっ歯」とも呼ばれます。前歯の見た目が気になって笑いにくい、すき間から息が漏れて発音しにくい、食べ物がはさまりやすいなどの問題につながることがあります。

正中離開が生じる原因は一つではありません。歯とあごの大きさのバランス、上唇小帯の位置や形、生まれつき歯の本数が少ないこと、舌で前歯を押す癖などが関係する場合があります。原因によって適した治療方法が異なるため、最初に検査で状態を確認することが大切です。

マウスピース矯正は、歯と歯のすき間を段階的に閉じる治療に適している場合があります。今回ご紹介する方は、この前歯のすき間(正中離開)に加えて出っ歯(上顎前突)もありましたが、どちらも歯を抜かずにマウスピース矯正で改善できました。

治療前の前歯の真ん中のすき間(正中離開・すきっ歯)
治療前:上の前歯の真ん中にすき間(正中離開)が見られます。これが「すきっ歯」の状態です。

あわせてあった「出っ歯(上顎前突)」について

出っ歯とは、上の前歯が下の前歯より前に大きく出ている状態のことです。専門的には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼びます。見た目の印象だけでなく、前歯で食べ物をうまく噛み切れない、口が閉じにくいといったお悩みにつながることもあります。

大切なのは、出っ歯には大きく2つのタイプがあることです。

① 歯の傾きが原因(歯槽性)

上下のあごの前後的なずれは大きくなく、前歯が前方へ傾いていることで出っ歯に見えるタイプ。前歯の傾きを内側へ整える治療が中心になります。

② あごの位置が原因(骨格性)

上あご自体が前方にある、下あごが後方にあるなど、上下のあごの位置関係が主な原因となるタイプ。程度によっては、抜歯を伴う矯正治療やワイヤー矯正、外科的矯正治療を検討する場合があります。

つまり「出っ歯だからマウスピースは無理」でも「出っ歯でもマウスピースで必ず治る」でもなく、原因がどちらのタイプかを診断で見きわめることが出発点になります。今回ご紹介するのは、①の歯の傾きが主な原因だった方の症例です。

今回の患者さまは、口腔内所見や横顔のレントゲン写真(セファロ)などを総合して、歯槽性上顎前突と診断しました。セファロ分析では、上下のあごの前後関係を示すANBが2.7度で、骨格的な前後差は大きくありませんでした。前歯が前方へ傾いていたため、出っ歯の主な原因は骨格ではなく歯の傾きにあると判断しました。

治療前のセファロ(横顔のレントゲン)
セファロ(横顔のレントゲン):あごの骨に対して前歯が前に傾いています

症例:前歯のすき間(正中離開)と出っ歯を非抜歯のマウスピース矯正で改善(症例No.30)

患者症例No.30 / 20代・男性 / 奈良市
主なお悩み前歯の突出(出っ歯)と、前歯の真ん中のすき間(正中離開)が気になる
診断名歯槽性上顎前突(歯の傾きが主な原因の出っ歯)+正中離開(前歯の真ん中のすき間)
使用した装置マウスピース矯正
抜歯なし(非抜歯)
治療期間2年4ヶ月
治療費(治療開始時)940,000円(税込/精密検査・調整料は別)
治療前の正面のかみ合わせ(出っ歯と前歯のすき間)
治療前
治療後の正面のかみ合わせ
治療後

治療結果には個人差があります。

主なリスク・副作用:装着時間が不足すると計画どおりに歯が動かない場合があります/治療途中に追加のマウスピースが必要になる場合があります/歯根吸収や歯肉退縮が生じる可能性があります/むし歯や歯周病のリスクがあります/保定装置を使用しない場合は後戻りする可能性があります/歯の動き方によって治療期間が延びることがあります。

なぜ、抜歯せずにマウスピースで治せたのか

精密検査の結果、上下のあごの骨格的なバランスは比較的良好で、出っ歯の主な原因は前歯の傾きにあると判断しました。抜歯によって大きなスペースをつくる必要性は低く、前歯の傾きを整えながら正中離開を閉鎖できると判断したため、非抜歯のマウスピース矯正を選択しました。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正は、どちらも矯正力を加えて歯を移動させる治療ですが、力のかけ方や得意とする歯の動きが異なります。治療方法は、単純に歯を動かす量だけで決まるものではありません。抜歯の有無、歯の傾き、奥歯の位置、かみ合わせ、患者さまが装着時間を守れるかなどを総合して選択します。今回の症例では、前歯の傾きと正中離開を改善するうえで、マウスピース矯正が適していると判断しました。

ポイント:同じ「出っ歯」でも、骨格が主な原因のタイプでは抜歯を伴う矯正治療やワイヤー矯正が適することもあります。マウスピース矯正で治療できるかどうかは、口腔内写真、歯型、レントゲン、セファロ分析、かみ合わせなどを確認して判断します。必要に応じてCTを撮影する場合もあります。

前歯の真ん中のすき間(正中離開)も一緒に閉じました

この方は出っ歯に加えて、上の前歯の真ん中にすき間(正中離開)もありました。今回は、前歯の傾きを整える治療と並行して、前歯中央のすき間も閉鎖しました。治療後の写真では、治療前に認められた正中離開が改善していることを確認できます。

治療の経過

マウスピースを段階的に交換しながら、少しずつ前歯を後ろに起こしていきました。治療中はDentalMonitoringを使用し、患者さまにご自宅で口腔内を撮影していただきました。来院と来院の間にも、マウスピースの適合状態や歯の動きを確認し、必要に応じて来院時期や治療計画を調整しました。

治療前 治療前の正面のかみ合わせ 治療8ヶ月後の正面 治療16ヶ月後の正面 治療22ヶ月後の正面 治療後の正面のかみ合わせ
治療前
治療前8ヶ月16ヶ月22ヶ月治療後

スライダーを動かすと、歯が少しずつ動いていく様子がわかります

この症例の詳細ページを見る 治療前後の写真や検査データを、症例ページでさらに詳しくご覧いただけます

マウスピース矯正を計画どおり進めるために重要な装着時間

マウスピース矯正は患者さま自身で取り外せるため、食事や歯みがきをしやすい一方、装着時間が不足すると計画どおりに歯が動かない場合があります。

当院では、原則として1日22時間程度の装着をご案内しています。食事と歯みがき以外の時間は装着し、マウスピースの交換時期についても指示を守っていただくことが重要です。この患者さまにも、治療中は装着時間を守っていただきながら治療を進めました。

費用と期間の目安

※以下は現在の当院の料金です。この患者さまの治療開始時の料金とは異なる場合があります。

初診相談無料
精密検査16,500円(初診相談から3ヶ月以内は4,400円割引)
マウスピース型矯正装置(全期治療)89万〜99万円(税込)
毎回の調整料4,400円/回

治療期間は歯並びの状態によって変わります。今回の方は2年4ヶ月でしたが、これはあくまで一例です。「何ヶ月で必ず終わります」とお約束はできませんが、精密検査のあとに、あなたの歯並びに合わせた見通しをお伝えします。最新の料金は料金ページでご確認ください。

よくある質問

Q. 前歯のすき間(正中離開・すきっ歯)はマウスピースで治せますか?
正中離開は、原因やすき間の大きさによってはマウスピース矯正で改善できます。今回の症例でも、前歯中央のすき間を閉鎖しました。ただし、上唇小帯の位置、歯の本数、歯の大きさ、舌の癖などが関係している場合があるため、原因を確認したうえで治療方法を決めます。
Q. 出っ歯はマウスピース矯正だけで治せますか?
歯の傾きが主な原因で、必要な歯の移動がマウスピース矯正に適している場合は、マウスピースのみで改善できることがあります。あごの骨格が主な原因のタイプでは、抜歯を伴う矯正治療やワイヤー矯正が適することもあります。精密検査でどちらのタイプかを見きわめます。
Q. マウスピースは1日どのくらいつけますか?
当院では、原則として1日22時間程度の装着をご案内しています。食事と歯みがき以外の時間は装着します。装着時間が治療の進み方に影響します。
Q. 出っ歯の矯正で必ず抜歯が必要ですか?
いいえ。今回のように歯を抜かずに治せるケースもあります。抜歯が必要かどうかは、出っ歯の原因やお口の中のスペースによって判断します。
Q. マウスピース矯正はどのくらい通院しますか?
当院ではDentalMonitoringを使用し、来院の間にも口腔内の状態を確認しています。ただし、定期的な来院は必要です。通院間隔は治療内容や歯の動きによって異なります。遠方の方やお忙しい方にも続けやすい仕組みです。
氏井矯正歯科クリニック 院長

院長より

正中離開や出っ歯は、見た目が似ていても原因は患者さまによって異なります。大切なのは、最初からマウスピースかワイヤーかを決めるのではなく、歯の傾き、骨格、かみ合わせ、すき間が生じた原因を確認することです。今回の症例では、骨格的なずれが大きくなく、前歯の傾きが主な原因だったため、非抜歯のマウスピース矯正を選択しました。一方で、同じように見える歯並びでも、別の治療方法が適している場合があります。初診相談では、現在の状態と考えられる治療方法を分かりやすくご説明します。

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