「上の前歯だけが、ほかの歯より内側に入っている」。小学校の高学年ごろから、こうしたお悩みでご相談に来られるお子さんは少なくありません。
今回ご紹介するのは、上の真ん中の前歯2本が内側に傾いていた12歳の女の子です。お悩みが上の前歯だけだったので、上の歯だけに装置をつけ、子どもの矯正(1期治療)の範囲で前歯を整えました。歯は抜いていません。どこまで治して、どこは治していないのかも含めて、正直にご紹介します。
目次
症例:上の前歯が内側に入っている(症例No.67)
初診の問診票には、保護者の方がこう書いてくださっていました。
「上の前歯が内側気味にある」
「(5年生頃から)前歯だけがズレ気味な事に気になり出した」
この方は、当院に通院中の患者さんからのご紹介で来院されました。
| 患者 | 症例No.67 / 12歳・女性 / 奈良市 |
|---|---|
| 主なお悩み | 上の前歯が内側に入っている |
| 診断名 | 上の真ん中の前歯2本が内側に傾いた、でこぼこ(叢生) |
| 使用した装置 | 上の歯だけの部分矯正(白い表側の装置)+ヘッドギア |
| 抜歯 | なし |
| 装置をつけて歯を動かした期間 | 8か月 |
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治療結果には個人差があります。
前歯が「内側に入っている」とは、どういう状態か
前歯は本来、少し前に傾いて、上の歯が下の歯に軽くかぶさるように並びます。この方は、上の真ん中の前歯2本だけが内側に傾いていたため、隣の歯(前から2番目の歯)より奥に引っ込んで見え、前歯のラインがでこぼこになっていました。
正面から見ると「前歯がずれている」「2番目の歯が出ている」ように見えるので、ご家族も原因がどこにあるのか分かりにくい歯並びです。
検査で骨と歯の位置を確認する
子どもの矯正でも、見た目だけで治療方針は決めません。頭部のX線写真で骨と歯の位置を測るセファロ分析で、あごの骨のバランスと前歯の傾きを確認したうえで、治療の範囲を決めました。セファロ分析の見方は、セファロ分析とは?(Part1)、前歯の位置の診断(Part2)、9つの顔のタイプ(Part3)で詳しく解説しています。
分析でわかったのは、次の3点です。
- 上の前歯が、平均よりはっきり内側に傾いていました。見た目の「前歯が引っ込んでいる」の原因は、ここにありました
- あごの骨の前後のずれは、大きくありませんでした。骨ではなく歯の傾きの問題なので、前歯の傾きを起こす治療で対応できると判断しました
- 上下の前歯の角度が開いていました。上の前歯が立ちすぎているためで、前歯を本来の傾きに戻すと、この角度も平均に近づきます
なぜ「前歯だけ」の治療にしたのか
この方のお悩みは、はっきり上の前歯だけでした。そこで、全体の噛み合わせまでは治療せず、上の前歯を整えることに目的を絞った子どもの矯正(1期治療)にしました。
- 装置は上の歯だけ。下の歯には装置をつけていません
- 歯は抜いていません。内側に傾いた前歯を、本来の傾きに起こして並べました
- 噛み合わせは治療していません。治療の範囲を、ご本人とご家族の「前歯が気になる」に合わせています
「矯正をするなら全部治さないといけない」と思われている方も多いのですが、お子さんの場合は特に、気になっている所に絞って治すという選択肢があります。逆に言うと、噛み合わせまで整えたい場合は、大人の歯がそろってから改めて治療(2期治療)を考えることになります。
取りはずしの装置ではなく、表側の装置にした理由
ご本人の希望は、取りはずしができる装置(マウスピース型)でした。ただ、この方は前歯を並べるすき間をつくるために、上の奥歯を後ろへ動かす必要があり、そのためにヘッドギアを使いました。ヘッドギアは、奥歯につけた装置にワイヤーをかけて、奥歯を後ろへ引く装置です。その力を受け止められるように、上の歯には表側の装置をつけています。
ヘッドギアがどんな装置かは、当院のYouTubeで紹介しています(1分37秒あたりから)。
装置をつけてから8か月で整った
上の前歯は、装置をつけてから約8か月で整いました。6か月の時点で、内側に入っていた前歯がほぼ前にそろってきているのが、写真で分かります。
※治療期間には個人差があります。歯が動くペースについては、治療開始から約半年後の歯並びを症例写真で比較でも紹介しています。
この症例から言えること
- 「前歯がずれている」の原因が、真ん中の前歯の内側への傾きにあることがあります
- 子どもの矯正では、気になっている所に絞って治す方法もあります
- どこまで治すか(前歯だけか、噛み合わせまでか)は、治療を始める前に決めておきます
費用の目安
※2026年11月1日時点の当院の料金です(すべて税込)。この患者さまが治療を始めたときの料金とは異なる場合があります。
| 初診相談 | 無料(初診相談+CT簡易診断 4,400円) |
|---|---|
| 精密検査 | 16,500円 |
| 診断 | 16,500円 |
| 子どもの矯正(Ⅰ期治療) | 48万円(反対咬合・開咬の場合は60万円) |
| 毎回の調整料 | 4,400円/回 |
大人の歯並びになってからⅡ期治療に進む場合は、Ⅱ期治療費が40万〜50万円かかります。最新の料金は料金ページでご確認ください。
よくある質問
- Q. 子どもの矯正で、前歯だけ治すことはできますか?
- できる場合があります。お悩みが前歯に限られていて、あごの骨のバランスに大きな問題がなければ、今回の方のように前歯だけを整える治療を選べます。噛み合わせまで治すかどうかは、検査の結果をもとにご家族と相談して決めます。
- Q. 前歯だけ治したあと、大人になってからまた矯正が必要になりますか?
- 必要になることもあります。前歯だけの治療では噛み合わせは治していないので、大人の歯がそろったときに噛み合わせも整えたい場合は、Ⅱ期治療を検討します。治療を始める前に、どこまで治すのかを確認しておくことが大切です。
- Q. 前歯が内側に入っているのは、自然に治りますか?
- 前歯が生えそろった後に内側に傾いている場合は、自然に前に出てくることはあまり期待できません。気になり始めたら、一度相談にお越しください。今すぐ治療が必要かどうかも含めてお伝えします。
- Q. 何歳ごろに相談すればいいですか?
- 前歯が生え変わって「ずれているかも」と気になったときが、相談のタイミングです。今回の方も、小学5年生ごろから気になり始めて、12歳で来院されました。
院長より
子どもの矯正というと「何年もかかる」「全部の歯に装置をつける」と思われがちです。でも今回の方のように、気になっているのが上の前歯だけなら、そこに絞って治すこともできます。大切なのは、始める前に「どこまで治すか」をご家族と一緒に決めておくことです。お子さんの前歯が気になったら、まずは初診相談で、今すぐ治療が必要かどうかから一緒に確認しましょう。