症例別の治療法について

【奈良の矯正歯科医が解説】最初から歯ぐきが下がっていた19歳の矯正|経過を見ながら進めて、歯ぐきが深刻に下がることなく治療を終えた症例

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2026.10.06
で包む アイキャッチ: 本文には入れない(WordPress側で設定) ==================================================================== –>

歯ぐきが下がっている人でも、矯正治療はできるのでしょうか。

答えは、下がっている量や場所によります。歯を動かすと歯ぐきが下がる(歯肉退縮)ことがあるため、すでに下がっている方は、治療前に状態を確認したうえで、何を優先するかを決めておく必要があります。

今回ご紹介するのは、「前歯で噛み切れない」というお悩みで来院された19歳の女性です。ご本人は歯ぐきのことは気にされていませんでしたが、検査で下の歯ぐきが下がっていることが分かりました。治療前に方針を決め、毎月の来院とデンタルモニタリングで歯ぐきを見続けながら進めた結果、歯ぐきは深刻に下がることなく、歯並びもきれいに整いました。

症例:前歯で噛み切れない、でこぼこの歯並び(症例No.88)

初診の問診票には、ご本人の言葉でこう書かれていました。

「前歯でものが噛み切れない」

「小学生の頃より前歯が押されてガタガタしてきた。硬いものを食べる時前歯のみで噛みきれないことが多い」

患者症例No.88 / 19歳・女性 / 奈良市
主なお悩み前歯でものが噛み切れない、歯並びのガタガタ
診断名叢生(でこぼこ)
初診時の歯ぐき下の歯ぐきが下がっている(歯肉退縮)
使用した装置白い表側のワイヤー矯正、インプラントアンカー
抜歯上下の親知らず4本(小臼歯は抜いていません)
治療期間1年10か月
治療前 治療前:前歯が噛み合わず、でこぼこがある状態 治療6か月後:上下に白い表側の装置と上あごのインプラントアンカーをつけた状態 治療1年6か月後:前歯が噛み合ってきた状態 治療後:でこぼこが改善し前歯が噛み合った状態
治療前
治療前6か月1年6か月治療後

スライダーを動かすか、時点の文字をタップすると写真が切り替わります

治療結果には個人差があります。

主なリスク・副作用:歯ぐきが下がる(歯肉退縮)/歯の根が短くなる(歯根吸収)/歯の神経が弱る(歯髄壊死)/歯と骨がくっついて予定どおりに動かない(癒着)などが生じる可能性があります。抜歯には痛みや腫れを伴うことがあります。インプラントアンカーは、埋入時に痛みや腫れが出ることや、外れることがあります。保定装置を使わない場合は後戻りする可能性があります。

初診の時点で、下の歯ぐきが下がっていた

ご本人は気にされていませんでしたが、検査で下の歯ぐきがすでに下がっていることが分かりました。歯ぐきが下がっているのは年齢を重ねた方、というイメージがあるかもしれませんが、この方のように10代でも下がっていることがあります。

そのほかに分かったのは、次のようなことです。

  • 上下に中くらいのでこぼこ(叢生)がある
  • 上の前歯がやや前に出ている
  • 前歯が噛み合いにくい(開咬)傾向がある
  • 歯の形から、歯と歯ぐきの間に小さな三角形のすき間(ブラックトライアングル)ができやすい

「前歯で噛み切れない」のは、前歯が上下でしっかり噛み合っていなかったためです。

セファロ分析

頭部のX線写真で骨と歯の位置を測るセファロ分析も行いました。セファロ分析そのものについては、セファロ分析とは?顔の特徴から読み解く矯正治療の方法(Part1)で解説しています。

治療前のセファロ分析:頭部の3D画像と各計測値
治療前のセファロ分析。右側の数値のうち、色が付いているほど平均から離れています

当院では、セファロ分析をもとに、顔のタイプを前後的要因(出っ歯・受け口の傾向)と垂直的要因(顔の縦の長さ)の組み合わせで9つに分類しています。この方はパターン5でした。

前後的要因と垂直的要因で分類した9つの顔のタイプ
9つの顔のタイプ。この方は中央の「パターン5(Class I・平均的な顔の長さ)」
視点この方平均わかったこと
骨格的な位置(ANB)2.3°約3°あごの骨の前後のバランスは正常
上の前歯の傾き(U1 to SN)105.8°約102°平均よりやや前に傾いている
口元のバランス(Eライン)――上下の唇の出方は正常の範囲

3つの視点の見方は、カウンセリングのCTで分かること・分からないこと(Part2)で紹介しています。

治療を始める前に決めたこと

歯ぐきが下がっている部分は、歯を動かすことでさらに下がる可能性があります。そこで診断の段階で、ご本人と次のことを決めておきました。

治療前にお伝えしたこと

  • 下の歯ぐきが下がっているため、矯正治療中に進む可能性があること
  • その場合は、歯を長く残すこと(歯の保存)を第一に優先すること
  • そのために、少しガタガタが残る可能性があること(上下の歯の真ん中がずれる可能性も含めて)

さらに、もし歯ぐきが下がって痛みが出た場合は、歯ぐきの移植(結合組織移植:CTG)を歯周病の専門の先生にお願いする予定にしていました。下がってから考えるのではなく、下がった場合の対応まで先に決めておく。これが、歯ぐきが下がっている方の矯正で当院が大切にしていることです。

歯ぐきを見続けられる方法を選んだ

小臼歯は抜かなかった

カウンセリングの段階では、でこぼこと上の前歯の出っ張りを治すために、小臼歯(前から4〜5番目の歯)の抜歯が必要になるとご説明していました。

ところが精密検査で測ってみると、上下の唇の出方は正常の範囲でした。そこで小臼歯は抜かずに、上下の親知らずを抜き、上あごの真ん中(正中口蓋)に入れたインプラントアンカー(骨に入れる小さなネジ)を使って奥歯を後ろへ動かし、でこぼこを並べるすき間をつくりました。

抜く・抜かないの判断基準は、矯正で抜歯は必要?判断基準と非抜歯のリスクを症例で解説でも紹介しています。

マウスピースではなく、ワイヤー矯正にした

問診票では「なるべく目立たない装置」「マウスピース型矯正」を希望されていました。ただ、マウスピース型矯正では、歯ぐきが下がらないように細かくコントロールするのが難しいと考えました。そこで、毎月の来院で歯ぐきと歯の動きを直接確認できる、白い表側のワイヤー矯正をご提案しました。

毎月の来院と、デンタルモニタリングで見続けた

治療中は、歯ぐきの状態を経過観察しながら進めました。毎月の来院で直接確認し、来院のあいだはデンタルモニタリング(ご自宅で撮影した歯の写真をAIが確認する仕組み)で見ていました。

2024年4月下の装置をつける前
デンタルモニタリングの画面(2024年4月5日):ご自宅で撮影した左側の写真
2024年7月上下に装置がついた状態
デンタルモニタリングの画面(2024年7月4日):ご自宅で撮影した左側の写真と撮影履歴

実際のデンタルモニタリングの画面です。上の線の点が、ご自宅で撮影した日です。来院のあいだも定期的に撮影していただき、下の歯ぐきの状態に変化がないかを確認していました。

結果:歯ぐきは深刻に下がらなかった

1年10か月の治療を終えて、下の歯ぐきが深刻に下がることはありませんでした。左下の前から2番目の歯(側切歯)の歯ぐきは、わずかに下がりました。痛みも出なかったため、予定していた歯ぐきの移植(CTG)は必要ありませんでした。

下の歯ぐきが写っている左側から、治療前と治療後を比べてみてください。

治療前初診時の左側。下の歯ぐきが下がっている
治療前の左側:下の歯ぐきが下がっている状態
治療後治療後の左側。左下の前から2番目の歯の歯ぐきがわずかに下がったが、深刻な下がりはない
治療後の左側:左下の前から2番目の歯の歯ぐきがわずかに下がったが、歯ぐきの位置はおおむね保たれ、歯が噛み合っている状態

歯並びも、心配していたガタガタが残ることはなく、でこぼこはきれいに改善しました。前歯が上下で噛み合うようになり、主訴だった「前歯で噛み切れない」も改善しています。

※治療結果・治療期間には個人差があります。

この症例の詳細ページを見る 治療前後の写真を、症例ページでさらに詳しくご覧いただけます

この症例から言えること

  • 歯ぐきが下がっていても、量や場所によっては矯正治療ができます
  • 大切なのは、治療前に「何を優先するか」と「下がった場合にどうするか」を決めておくことです
  • 治療中は、毎月の確認とデンタルモニタリングで歯ぐきを見続けます
  • 歯ぐきが下がっていることは、10代や20代でもあります

費用の目安

※2026年10月6日時点の当院の料金です(すべて税込)。この患者さまが治療を始めたときの料金とは異なります。

初診相談無料(初診相談+CT簡易診断 4,400円)
精密検査16,500円(初診相談から3か月以内は4,400円割引)
3Dデジタル診断(診断料)38,500円
表側矯正(クリアブラケット)83万〜93万円(税込)
毎回の調整料4,400円/回

親知らずの抜歯は、提携する歯科医院で行います(費用は別途)。最新の料金は料金ページでご確認ください。

よくある質問

Q. 歯ぐきが下がっていても矯正はできますか?
下がっている量や場所によります。治療中に下がる可能性があるため、治療前にリスクを確認し、歯を守ることを優先した計画を立てます。今回の方も、初診の時点で下の歯ぐきが下がっていました。
Q. 矯正中に歯ぐきが下がってしまったらどうなりますか?
状態によっては、歯ぐきの移植(結合組織移植:CTG)などの処置を、歯周病の専門の先生にお願いすることがあります。今回の方も、下がって痛みが出た場合は移植をお願いする予定にしていましたが、深刻に下がることはなかったため必要ありませんでした。
Q. 若くても歯ぐきは下がりますか?
はい、下がっていることがあります。今回の方は19歳でしたが、初診の時点で下の歯ぐきが下がっていました。年齢に関係なく、治療前に確認することが大切です。
Q. 下がった歯ぐきは元に戻りますか?
必ず戻るわけではありません。原因や予防、戻す方法については矯正で歯茎が下がる?原因・予防・戻す方法を症例と論文で紹介で解説しています。
氏井矯正歯科クリニック 院長

院長より

歯ぐきが下がっている方の矯正では、「どこまできれいに並べるか」より先に、「何を守るか」を決めておくことが大切です。今回の方とも、治療前に、歯を残すことを優先すること、下がった場合は歯ぐきの移植をお願いすることを決めてから治療を始めました。そのうえで、毎月の来院とデンタルモニタリングで見続け、歯ぐきが深刻に下がることなく治療を終えることができました。歯ぐきが下がっているかどうかは、ご自身では気づかないことも少なくありません。まずは初診相談で、歯ぐきの状態も含めて一緒に確認しましょう。

矯正の無料相談を予約する

BACK