「口元が出ている」「横顔のEラインが気になる」。こうした悩みで矯正を考える方は、20代に多くいらっしゃいます。そして多くの方が、まず「目立たないマウスピース矯正で治せないか」と考えます。
今回ご紹介するのは、前歯のガタガタと口元の出っ張りが気になって来院された26歳の女性です。この方もマウスピース矯正を希望されていました。それでも当院は、上下4本の抜歯とワイヤー矯正をご提案しました。この記事では、治療前後の横顔の写真と、マウスピースではなくワイヤーを提案した理由をご説明します。
目次
症例:口元の出っ張りとEライン(症例No.43)
ご相談のときのお悩みは、次の3つでした。
- 前歯のガタガタ
- 口元が出ている
- Eラインが気になる
治療前から治療後までの写真は、症例集の症例43でもご覧いただけます。
| 患者 | 症例No.43 / 26歳・女性 / 桜井市 |
|---|---|
| 主なお悩み | 前歯のガタガタ・口元が出ている・Eラインが気になる |
| 診断名 | でこぼこ(叢生)を伴う、上下の前歯が前に出た歯並び(歯槽性上下顎前突=いわゆる口ゴボ) |
| 使用した装置 | 白い表側のワイヤー矯正+矯正用のミニスクリュー(インプラントアンカー) |
| 抜歯 | 上下左右4本 |
| 治療期間 | 2年 |
横顔はこう変わった
まずは、治療前と治療後の横顔をご覧ください。
治療前は、上下の唇が前に押し出され、口を閉じたときに下あごのあたりに力が入っているように見えます。治療後は唇が後ろへ下がり、鼻先からあご先までのラインがすっきりしました。
この変化は、唇を直接動かしたのではなく、唇を内側から押していた前歯を後ろへ下げたことで起きたものです。
Eラインとは?口元が出て見える理由
Eライン(エステティックライン)とは、鼻の先とあごの先を結んだ線のことです。横から見たとき、唇がこの線より大きく前に出ていると、口元が出ている印象になります。
唇の位置は、その内側にある前歯の位置に大きく左右されます。この方のように上下の前歯がそろって前に傾いていると、唇も一緒に前へ押し出されます。これが、いわゆる「口ゴボ」です。
ただし、Eラインは鼻の高さやあごの大きさによっても変わります。歯を下げるだけで、誰でも同じように線の内側に収まるわけではありません。口元が出ている原因が歯の傾きなのか、あごの骨の位置なのかを検査で確かめることが大切です。原因の見分け方は口ゴボ・出っ歯の原因をCT診断で解説|9分類パターンで紹介しています。上下顎前突(口ゴボ)そのものについては上下顎前突(口ゴボ)についてをご覧ください。
マウスピース希望だったのに、なぜワイヤーを提案したのか
まず大前提として、マウスピース矯正とワイヤー矯正は、歯に力をかけて動かすという原理は同じです。どちらかが精密というわけではありません。違うのは、得意な場面です。
- マウスピース矯正が得意な場面:歯を動かす量が比較的少ない治療。抜歯をしない治療など
- ワイヤー矯正が得意な場面:歯を動かす量が多い治療。抜歯をしたすき間に前歯を大きく下げる治療など
この方のいちばんの希望は、Eラインが気になる=横顔を変えたいということでした。横顔を変えるには、前歯をしっかり後ろへ下げる必要があります。そのために上下4本の歯を抜いてすき間をつくり、そこへ前歯を大きく移動させる計画になりました。
歯を動かす量が多いこの計画では、ワイヤー矯正のほうが向いていると判断し、マウスピースではなく白い表側のワイヤー矯正をご提案しました。ご本人にも納得していただき、治療を始めています。
他院でマウスピース矯正を始めたものの口元が下がらず、当院でワイヤー矯正に切り替えた例は他院のマウスピース矯正から切り替え、口ゴボを改善した20代女性の症例で紹介しています。
4本抜歯で口元が下がる仕組み
前歯を後ろへ下げるには、その分の場所が必要です。この方は上下左右の歯を1本ずつ、計4本抜歯して場所をつくりました。
- 抜いたすき間に前歯を下げる:まずガタガタを並べ、残ったすき間を使って前歯を後ろへ下げていきます
- 奥歯が前に来ないように支える:歯どうしで引っ張り合うと、前歯だけでなく奥歯も前に動いてしまい、せっかくのすき間が奥歯に使われてしまいます。そこで、骨に小さなネジ(矯正用のミニスクリュー)を入れて動かない支えにし、すき間をできるだけ前歯を下げるために使いました。ミニスクリューについてはミニスクリューの成功率93%は本当?で解説しています
抜く・抜かないの判断基準は、矯正で抜歯は必要?判断基準と非抜歯のリスクを症例で解説でも詳しく紹介しています。
治療の経過(2年)
スライダーを動かすと、治療前から治療後までの歯並びの変化をご覧いただけます。
スライダーを動かすか、時点の文字をタップすると写真が切り替わります
治療結果には個人差があります。
6か月後の写真では、抜歯したすき間がまだ残っており、まずガタガタを並べている段階です。20か月後には、すき間が閉じ、前歯が後ろへ下がっています。上の歯の写真を治療前と比べると、歯列のアーチがきれいなU字に整っているのが分かります。
※治療期間には個人差があります。この症例と同じ期間で終わることをお約束するものではありません。当院の治療期間のデータは矯正治療の期間はどれくらい?当院の300症例以上のリアルデータ公開にまとめています。
この症例から言えること
- 口元の出っ張りは、多くの場合、唇の内側にある前歯の位置が原因です
- 横顔まで変えたい場合は、抜歯をして前歯を大きく下げる治療が向いています
- マウスピースとワイヤーの原理は同じ。歯を動かす量が多いときはワイヤーが向いています
- Eラインは鼻やあごの形でも変わるため、原因を検査で確かめてから治し方を決めます
費用と期間の目安
※2026年10月時点の当院の料金です(すべて税込)。この患者さまが治療を始めたときの料金とは異なります。
| 初診相談 | 無料(初診相談+CT簡易診断 4,400円) |
|---|---|
| 精密検査 | 16,500円(初診相談から3か月以内は4,400円割引) |
| 3Dデジタル診断(診断料) | 38,500円 |
| 表側矯正(クリアブラケット) | 83万〜93万円 |
| マウスピース型矯正 | 89万〜99万円 |
| 毎回の調整料 | 4,400円/回 |
最新の料金は料金ページでご確認ください。
よくある質問
- Q. 口ゴボはマウスピース矯正で治せますか?
- 口元の出っ張りが軽く、歯を動かす量が少ない場合は、マウスピース矯正で改善できることがあります。横顔まで大きく変えたい場合は、抜歯をして前歯を大きく下げる必要があり、歯を動かす量が多いため、ワイヤー矯正が向いていることが多いです。原理は同じなので、どちらが向いているかは検査で歯を動かす量を確かめて決めます。
- Q. 矯正でEラインはきれいになりますか?
- 口元が出ている原因が前歯の傾きであれば、前歯を下げることで唇も下がり、Eラインに近づくことが多いです。ただ、Eラインは鼻の高さやあごの大きさでも変わるため、歯の矯正だけでは変化に限りがある場合もあります。どこまで変わりそうかは、精密検査で確認してからご説明します。
- Q. 4本も抜歯して大丈夫ですか?
- 抜歯をするのは、前歯を下げる場所をつくるためです。抜いたすき間は治療の中で閉じていきます。抜歯が必要かどうか、何本抜くかは、ガタガタの量と、口元をどこまで下げたいかで決めます。抜かずに治療できる場合もあるため、検査の結果をもとにご相談します。
- Q. 20代後半からでも矯正はできますか?
- できます。年齢による治療期間の差は小さく、この方も26歳で治療を始め、2年で治療を終えています。当院では、矯正を始める方の約半数が23歳以上です。
- Q. ワイヤー矯正の装置は目立ちませんか?
- この方は、歯の色になじむ白い装置を使いました。より目立たない方法として、歯の裏側につける矯正もあります。見た目と費用、通院の手間を比べてお選びいただけます。
院長より
「目立たないマウスピースで治したい」というご希望は、とても自然なものです。ただ、この方が本当に変えたかったのは、歯並びだけでなく横顔でした。マウスピースもワイヤーも歯を動かす原理は同じですが、得意な場面が違います。ご本人のゴールに合わせて、向いている方法をご提案するのが私たちの役目です。口元が気になる方は、まず初診相談で、出っ張りの原因が歯なのか骨なのかを一緒に確認しましょう。