初診カウンセリング

【奈良の矯正歯科医が解説】前歯のガタガタ、原因は「出っ歯」かも?上の2本だけ抜歯して11か月で整えた25歳女性の症例

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2026.10.05

「ガタガタが気になる」と相談に来られた方を検査すると、本当の原因が上の前歯の突出(出っ歯)だった、ということがあります。

今回ご紹介するのは、前歯のガタガタを主訴に来院された25歳の女性です。検査の結果、抜歯が必要と判断しましたが、抜いたのは上の2本だけ。下の歯は抜かずに、装置をつけてから約11か月で歯並びが整いました。なぜ抜歯が必要だったのか、なぜ上の2本だけで済んだのかを、頭部のX線写真(セファロ)の数値とあわせて説明します。

症例:前歯のガタガタと上の前歯の突出(症例No.54)

初診の問診票には、ご本人の言葉でこう書かれていました。

「上の歯がガタガタ特に前歯がかなり歪んでいるのが気になる」

「小学生の頃から気になっていたが歳を重ねるごとにさらに歯並びが悪くなってきてもっと気になるようになった」

前歯のでこぼこ(叢生)は、当院の初診相談でいちばん多いお悩みです。そして多くの方が気にされるのが「歯を抜く必要があるのか」という点です。

患者症例No.54 / 25歳・女性 / 大和郡山市
主なお悩み前歯のガタガタ
診断名でこぼこ(叢生)を伴う、上の前歯の突出(歯槽性上顎前突)
使用した装置白い表側のワイヤー矯正
抜歯上の左右の第一小臼歯(前から4番目の歯)2本/下の親知らず2本
装置をつけて歯を動かした期間11か月
治療前 治療前:上の前歯が前に傾き、でこぼこに重なっている状態 治療2か月後:上下に白い表側の装置をつけた状態 治療8か月後:抜歯したすき間が閉じてきた状態 治療後:前歯の突出とでこぼこが改善した状態
治療前
治療前2か月8か月治療後

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治療結果には個人差があります。

主なリスク・副作用:歯ぐきが下がる(歯肉退縮)/歯の根が短くなる(歯根吸収)/歯の神経が弱る(歯髄壊死)/歯と骨がくっついて予定どおりに動かない(癒着)などが生じる可能性があります。抜歯には痛みや腫れを伴うことがあります。保定装置を使わない場合は後戻りする可能性があります。

「ガタガタ」の正体は、前に倒れた前歯だった

ご本人のお悩みは「ガタガタ」でした。ところが、頭部のX線写真で骨と歯の位置を測るセファロ分析を行うと、でこぼこ以外の問題が見えてきました。セファロ分析そのものについては、セファロ分析とは?顔の特徴から読み解く矯正治療の方法(Part1)で詳しく解説しています。

治療前のセファロ分析:頭部の3D画像と各計測値
治療前のセファロ分析。右側の数値のうち、色が付いているほど平均から離れています

顔のタイプは「パターン8」

当院では、セファロ分析をもとに、顔のタイプを前後的要因(出っ歯・受け口の傾向)と垂直的要因(顔の縦の長さ)の組み合わせで9つに分類しています。

前後的要因と垂直的要因で分類した9つの顔のタイプ
9つの顔のタイプ。この方は下段中央の「パターン8(Class I・short face)」

この方はパターン8でした。

  • 前後的要因:正常(Class I)。上下のあごの骨の前後のずれ(ANB)は2.8°で、平均(約3°)とほぼ同じ。骨の位置は出っ歯でも受け口でもありませんでした
  • 垂直的要因:顔の縦の長さが短いタイプ(short face)。下あごの角度(FMA)は17°で、平均(約25°)より小さめ。このタイプは噛み合わせが深くなりやすく、実際に上の前歯が下の前歯に深くかぶさっていました

上の前歯の位置を3つの視点で見る

前歯の位置は、前歯の位置をセファロ分析で診断(Part2)で紹介している3つの視点で評価します。

視点この方平均わかったこと
骨格的な位置(ANB)2.8°約3°あごの骨のバランスは正常
上の前歯の傾き(U1 to SN)123°約102°平均より20°以上、前に倒れていた
口元のバランス(Eライン)――唇はEラインからそれほど前に出ていなかった

ここから分かったのは、骨の位置は正常なのに、上の前歯だけが大きく前に倒れているということです。でこぼこに見えていたのは、前に倒れた前歯が並びきれずに重なっていたためでした。つまり問題は骨ではなく「歯の傾き」なので、手術をしなくても矯正で治せるタイプです。

Part2でご紹介している治療方針のうち、この方は「上の前歯を後方へ動かす」パターンに当てはまります。そして、前歯を後ろへ下げるためのすき間をどう確保するかが、次の判断になりました。

なぜ「抜かずに治す」選択肢がなかったのか

前歯がここまで前に倒れていると、抜かずに並べようとした場合、でこぼこを並べるために前歯をさらに前へ押し出すことになります。でこぼこは取れても、前歯の突出は悪化してしまいます。

この方の場合、抜かずに治す選択肢は、ほぼありませんでした。前歯を後ろに下げて傾きを戻すためのすき間をつくるには、抜歯が必要だったのです。

なぜ上の2本だけで、下は抜かなかったのか

抜歯というと「上下で4本」を想像される方が多いのですが、この方は上の2本だけにしました。理由は2つです。

  • 下の前歯のでこぼこが、それほど大きくなかったこと
  • 口元(横顔)が大きく出ているわけではなかったこと。鼻先とあご先を結んだ線(Eライン)に対して、唇はそれほど前に出ていませんでした

そのため、下の歯を抜く必要はまったくありませんでした。下の親知らずだけは抜かせていただき、下のでこぼこを整えるのに役立てました。

治療前後の横顔の比較
治療前(左)と治療後(右)の横顔

抜く・抜かないの判断基準は、矯正で抜歯は必要?判断基準と非抜歯のリスクを症例で解説でも詳しく紹介しています。

ご本人は抜歯をどう受け止めていたか

問診票の「矯正治療で抜歯が必要なことがありますが、そのことについてどうお考えですか?」という質問には、「必要であれば仕方ない」に印がついていました。検査結果をもとに、なぜ抜歯が必要なのか、なぜ上の2本で足りるのかを説明し、この計画で進めることになりました。

装置をつけてから11か月で整った

上の前歯の突出とでこぼこは、装置をつけてから約11か月で改善しました。この方は、ご自宅で歯の写真を撮影してAIが歯の動きを確認する仕組み(デンタルモニタリング)を使い、来院のあいだも歯の動きを確認しながら治療を進めました。

※治療期間には個人差があります。抜歯をしても早く終えられた理由は、抜歯矯正なのに早く終わった理由|ワイヤー矯正の症例から治療期間を考察で詳しく紹介しています。

治療前から気をつけていたこと

検査の段階で、治療前から分かっていた注意点が3つありました。

  • 上の前から2番目の歯(側切歯)が小さめで、すき間が残りやすいこと
  • 歯ぐきが薄く、下がりやすいこと
  • 歯の形から、歯と歯ぐきの間に小さな三角形のすき間(ブラックトライアングル)ができやすいこと

結果として、3つとも問題なく、すき間のないきれいな歯並びに仕上がりました。

治療後の正面:すき間のない歯並び
治療後の正面
この症例の詳細ページを見る 治療前後の写真を、症例ページでさらに詳しくご覧いただけます

この症例から言えること

  • 「ガタガタ」がお悩みでも、原因が前歯の突出にあることがあります
  • 抜くかどうかは、でこぼこの量だけでなく、前歯の傾き・噛み合わせの深さ・口元のバランスで決めます
  • 抜く場合も、必ず上下4本というわけではありません

費用と期間の目安

※2026年10月5日時点の当院の料金です(すべて税込)。この患者さまが治療を始めたときの料金とは異なります。

初診相談無料(初診相談+CT簡易診断 4,400円)
精密検査16,500円(初診相談から3か月以内は4,400円割引)
3Dデジタル診断(診断料)38,500円
表側矯正(クリアブラケット)83万〜93万円(税込)
毎回の調整料4,400円/回

抜歯は、提携する歯科医院で行います(費用は別途)。最新の料金は料金ページでご確認ください。

よくある質問

Q. 前歯のガタガタの矯正は、必ず抜歯が必要ですか?
いいえ。でこぼこの量だけでなく、前歯の傾き、噛み合わせ、口元のバランスによって決まります。抜かずに治せる方もいます。抜かずに治した例は38歳・非抜歯で改善した症例をご覧ください。
Q. 上だけ抜いて、下は抜かないこともありますか?
あります。下のでこぼこの量や口元の状態によっては、上の抜歯だけで治療できることがあります。今回の方も、下は親知らずのみの抜歯でした。
Q. 抜歯をすると治療期間は長くなりますか?
抜いたすき間を閉じる分、長くなることはあります。ただ、抜歯の有無だけで期間が決まるわけではありません。今回の方は、装置をつけてから11か月で歯並びが整いました。
Q. 出っ歯は手術が必要ですか?
あごの骨の位置に大きなずれがある場合は、手術を併用することがあります。今回の方のように、骨のバランスは標準的で前歯の傾きが原因の場合は、手術をせずに矯正で治療できます。どちらに当てはまるかは、セファロなどの検査で判断します。
氏井矯正歯科クリニック 院長

院長より

「ガタガタが気になる」というご相談でも、検査をすると、原因が別のところにあることは少なくありません。今回の方も、本当の問題は前に倒れた上の前歯でした。抜く・抜かない、何本抜くかは、写真や見た目だけでは決められません。骨と歯の位置を測ったうえで判断します。まずは初診相談で、ご自身の歯並びの原因を一緒に確認しましょう。

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