症例別の治療法について

【奈良の矯正歯科医が解説】出っ歯の抜歯矯正、なぜ下の歯も抜く?26歳・上下4本抜歯で口元まで下げた症例

氏井庸介

氏井矯正歯科クリニック
院長 氏井庸介

DOCTOR PROFILE

2026.10.15

出っ歯の矯正で「歯を抜きます」と言われたとき、多くの方が驚くのが、「出ているのは上の歯なのに、なぜ下の歯まで抜くの?」ということです。

今回ご紹介するのは、上の前歯が出ているのが気になって来院された26歳の女性です。この方は上下4本の抜歯をして、白い表側のワイヤー矯正で治療しました。治療前後の横顔の写真とあわせて、上の2本だけを抜く場合と、上下4本を抜く場合の違いを説明します。

症例:上の前歯が出ている(症例No.47)

ご相談のときのお悩みは、「上の前歯が出ているのが気になる」でした。あわせて、口元の出っ張りも改善したいというご希望がありました。治療前から治療後までの写真は、症例集の症例47でもご覧いただけます。

患者症例No.47 / 26歳・女性 / 大阪市
主なお悩み上の前歯が出ている・口元の出っ張り
診断名上顎前突(出っ歯)
使用した装置白い表側のワイヤー矯正
抜歯上下左右の第一小臼歯(前から4番目の歯)計4本
治療期間2年9か月

横顔はこう変わった

症例47の横顔の比較。左が治療前で上下の唇が前に出ている。右が治療後で唇が下がり、口元がすっきりしている
左:治療前 / 右:治療後。治療結果には個人差があります

治療前は、上下の唇が前に出て、口元がふくらんで見えます。治療後は唇が後ろへ下がり、鼻からあごにかけてのラインがすっきりしました。

この変化は、上の前歯だけでなく、上下の前歯をそろって後ろへ下げたことで起きたものです。

出っ歯なのに、なぜ下の歯も抜くの?

出っ歯の抜歯矯正には、大きく分けて2つのパターンがあります。

上の2本だけ抜く上の前歯だけを後ろへ下げる治し方です。下の前歯の位置や下の歯並びに大きな問題がなく、上の前歯だけが出ている場合に選ばれます。
上下4本抜く上の前歯と下の前歯を、どちらも後ろへ下げる治し方です。口元全体を下げたい場合や、下の前歯も前に出ている場合に選ばれます。

唇は、上の前歯だけでなく下の前歯にも内側から支えられています。上の前歯だけを下げても、下の前歯が前に出たままだと、下唇の出っ張りは残りやすくなります。また、上の前歯だけを大きく下げると、上下の前歯の噛み合わせが合わなくなることがあります。

この方の場合、決め手になったのは初診のときの前歯の噛み合わせです。上の前歯は前に出ていましたが、上下の前歯はすでに噛み合っていました。

この状態で上の2本だけを抜いて上の前歯を後ろへ下げると、上の前歯が下の前歯より内側に入ってしまい、反対咬合(受け口の噛み合わせ)になってしまいます。そこで、上の前歯と一緒に下の前歯も後ろへ下げられるように、上下4本の抜歯を選びました。上下の前歯をそろえて下げることで、噛み合わせを保ったまま、ご希望だった口元の出っ張りも改善できます。

上の2本だけで治る出っ歯もあります。上の前歯が大きく前に傾いていて、下の歯並びが整っている方は、上の2本だけの抜歯で治療することがあります(上の2本だけ抜歯して11か月で整えた25歳女性の症例)。抜歯をせずに治せる場合もあります(出っ歯とでこぼこを歯を抜かずに治した17歳の症例)。何本抜くかは、検査の数値と、ご本人がどこまで口元を下げたいかで決めます。

前歯の位置や傾きをどう測るかはカウンセリングのCTで分かること・分からないことで、出っ歯そのものについては上顎前突(出っ歯)のページで紹介しています。抜く・抜かないの判断基準は矯正で抜歯は必要?判断基準と非抜歯のリスクを症例で解説もご覧ください。

治療の経過

スライダーを動かすと、治療前から治療後までの歯並びの変化をご覧いただけます。

治療前 治療前:上の前歯が下の前歯より大きく前に出ている状態 治療4か月後:上下に白い表側の装置をつけた状態 治療12か月後:抜歯したすき間を閉じながら前歯を後ろへ下げている状態 治療後:上下の前歯が後ろへ下がり、出っ歯が改善した状態
治療前
治療前4か月12か月治療後

スライダーを動かすか、時点の文字をタップすると写真が切り替わります

治療結果には個人差があります。

治療前の横からの写真では、上の前歯が下の前歯より大きく前に出ています。12か月後の写真では、前歯の並びは整ってきていますが、抜歯したすき間はまだ残っています。ここから、残ったすき間を使って前歯をさらに後ろへ下げていきました。治療後は、上下の前歯が後ろへ下がり、すき間も閉じています。

治療期間は2年9か月でした。上下の前歯を大きく後ろへ下げる治療は、歯を動かす距離が長くなるため、時間がかかることがあります。

※治療期間には個人差があります。この症例と同じ期間で終わることをお約束するものではありません。当院の治療期間のデータは矯正治療の期間はどれくらい?当院の300症例以上のリアルデータ公開に、治療開始から半年でどこまで動くかは治療開始から約半年後の歯並びを症例写真で比較にまとめています。

主なリスク・副作用:歯ぐきが下がる(歯肉退縮)/歯の根が短くなる(歯根吸収)/歯の神経が弱る(歯髄壊死)/歯と骨がくっついて予定どおりに動かない(癒着)などが生じる可能性があります。保定装置を使わない場合は後戻りする可能性があります。
この症例の詳細ページを見る 治療前後の写真を、症例ページでさらに詳しくご覧いただけます

この症例から言えること

  • 出っ歯の抜歯矯正には、上の2本だけ抜く方法と、上下4本抜く方法があります
  • 唇は上下の前歯に支えられているため、口元全体を下げたい場合は下の前歯も下げる必要があります
  • 上下4本抜いて上下の前歯をそろって下げると、横顔の口元まで変わりやすくなります
  • 何本抜くかは、検査の数値と、どこまで口元を下げたいかで決めます

費用と期間の目安

※2026年10月時点の当院の料金です(すべて税込)。この患者さまが治療を始めたときの料金とは異なります。

初診相談無料(初診相談+CT簡易診断 4,400円)
精密検査16,500円(初診相談から3か月以内は4,400円割引)
3Dデジタル診断(診断料)38,500円
表側矯正(クリアブラケット)83万〜93万円
毎回の調整料4,400円/回

最新の料金は料金ページでご確認ください。

よくある質問

Q. 出っ歯の矯正で、下の歯も抜くのはなぜですか?
上下の前歯がすでに噛み合っている状態で上の前歯だけを下げると、上の前歯が下の前歯の内側に入り、反対咬合(受け口の噛み合わせ)になってしまいます。口元全体を下げたい場合も同じで、上の前歯と一緒に下の前歯も後ろへ下げる必要があります。そのための場所をつくるために、下の歯も抜歯します。上の前歯だけが出ている場合は、上の2本だけの抜歯で治療することもあります。
Q. 出っ歯は上の2本だけ抜けば治りますか?
下の歯並びが整っていて、上の前歯だけが前に出ている場合は、上の2本だけの抜歯で治療できることがあります。口元全体の出っ張りも改善したい場合は、上下4本の抜歯が適していることがあります。どちらが合うかは、精密検査の結果をもとにご説明します。
Q. 抜歯したすき間はどうなりますか?
抜いたすき間は、前歯を後ろへ下げたり、並びを整えたりするために使い、治療の中で閉じていきます。治療が終わったときには、すき間は残らないように仕上げます。
Q. 上下4本抜歯すると、治療期間は長くなりますか?
前歯を大きく後ろへ下げる治療は、歯を動かす距離が長いため、時間がかかることがあります。この方は2年9か月でした。期間には個人差があるため、検査の結果をもとに見込みをご説明します。
Q. 抜歯をする出っ歯の治療は、マウスピースではできませんか?
マウスピースとワイヤーは、歯を動かす原理は同じです。歯を動かす量が多い治療はワイヤー矯正が向いていることが多いですが、抜歯をしてマウスピース矯正で治療した例もあります(上顎2本を抜歯してマウスピース矯正で治療した26歳女性の症例)。歯を動かす量によって、向いている装置をご提案します。
氏井矯正歯科クリニック 院長

院長より

「出っ歯なのに、下の歯まで抜くんですか?」は、初診相談でよくいただく質問です。歯を抜く本数は、出っ歯を治すことだけでなく、横顔をどこまで変えたいかで変わります。この方は口元の出っ張りも気にされていたので、上下の前歯をそろって下げる計画にしました。何本抜くか、抜かずに治せるかは、検査をすればはっきり説明できます。まずは初診相談で、ご自身に合った治し方を一緒に確認しましょう。

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